読書会『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件』(城山三郎 著)を行いました。
明治時代。栃木県・足尾銅山の鉱毒で甚大な被害を受け、反対運動の急先鋒となった谷中(やなか)村は、絶体絶命の危機にあった。
銅山の資本家と結託した政府が、村の土地を買収し、遊水地として沈めようとしていた。
反対運動の指導者・田中正造は、村を守るため、政治権力に法廷での対決を挑む。だが、それは果てしなく、苦難に満ちた闘いだった。
日本最初の公害闘争を巡り、権力の横暴に不撓不屈の精神で立ち向かった人々を描いた伝記文学。
↓ 感想
・十年以上前に読んだ時は、内容が難しくて理解できなかった。読み返したら、とても粗削りな印象を受けた。
・すごい小説だと思った。為政者の横暴を感じた。
・全編にわたり、正造と残留民たちの気持ちのつながりが描かれていて、追いやられる村民たちがどうなるのかドキドキしながら読んだ。
・とても優れた共同体のリーダーで、民衆を率いて道を切り開き、法律でもって立ち向かった、公害運動の原点。
・刊行当時(1962年)は、田中正造の存在はほとんど知られていなかった。作者の存在の大きさを感じた。
・当時の時代背景を知ってから読むと、話がわかりやすくなった。救いのない話だが、現代にも通じる。
・正造と宗三郎(作中の人物)の考え方にずれがあり、正造が宗三郎を東京に置き去りにしたエピソードが印象的。
・大学教員時代だった当時の作家性の揺れが表れている。芥川賞を狙っていたが、直木賞を受賞した以後の作品からは描けない作風。