2018年3月12日月曜日

拡大読書会・奥山景布子「葵の残葉」


2018311日(日)

名古屋・東別院イーブルなごやにて、あいち文学フォーラム主催イベント・拡大読書会を行いました。
テキストは奥山景布子「葵の残葉」(文藝春秋)。




徳川傍系の高須家から、尾張・会津・桑名に散った若き兄弟が、維新派と佐幕派に分かれ対立しながらも、葵の御紋を胸に新時代の礎を築いた四兄弟の運命を描いた作品です。




はじめに奥山さん本人に送った、作品に関する質問の回答をいただきました。
その後、奥山さんがラジオ出演された時の録音を聴きました。
持ち寄った資料の簡単な紹介をして、グループに分かれて読書会開始です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・これまで慶勝について情報が少なかったので、この作品で興味が深まった。
・おけいが重要な役割を担っていた。慶勝とのやりとりは温かみを感じた。
・明治維新の隠れたヒーローだと思うが、書き方がさびしく感じた。
・長州側の首実検を「したこと」によって、青松葉事件の原因となったが、首実検を「しなかったこと」によって、戦乱が起こったらどういう展開になったか、ということになったか、ということも想像してほしい。
・征伐という形で青松葉事件に至ったことがはっきりとせず、慶勝に対する歯がゆさを感じる。
・慶勝は、近代装備を見知っていたので、どうしても戦争を起こさずに外交で決着をつけたかった。戦争を防いだ反対の結果として、長州の3人の首実検で収めた。
・広島まで写真機を持参したところは、反乱のある程度の終結を予想しており、そこの慶勝の考えが出ていた。
・写真機が発達した西欧の文明には勝てない、そこから薩摩とは戦いたくない、という心理があったのではないか。



・四兄弟の写真撮影からの切り出しで、会話が多くて読みやすい。
・弟たちは、兄・慶勝の行動を皮肉っている。
・尾張徳川の古文書を読んでいて、その視点からだと慶勝のしたことは御三家の筆頭でありながらけしからん。青松葉のくだりが不鮮明。
・佐幕派からみれば慶勝は裏切り者だが、政治の不安定さを抱えながら立ち回るつらさを感じる。
・慶勝は勤王で、弟たちを気にかけてはいるが、内乱を起こしてはいけないという苦しい立場にせまられている。慶勝をもっと大事にしてほしかった。
・新撰組が好きなので、容保たち兄弟と同じ年代で京都にいたこととつなげて読んだ。
・「冬の派閥」から40年近く経過しているので、新しい資料が出た今、慶勝の新しい面が見られた。
・慶勝は賢い殿様だ。北海道八雲を支援するとき、名古屋の各銀行にはたらきかけて出資させた。政治家としてはいまいちだが、経済人としてすばらしい。
・定敬(さだあき)が奔走していて、一番好感が持てる
・「革命」が西洋とは違うものとなっていて、それは天皇制度と関係していたのでは。
・写真が趣味で、各場面でモチーフになっていて、それがとても見事に描写されている。西郷隆盛とのやりとりは、実際の写真がないことから、より一層おもしろく感じた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

話し合いは時間が足りないくらい白熱していました。様々な人の意見が出て、とても勉強になって楽しかった、と感想もいただきました。
文学フォーラムの母体である読書会に興味をもった方もいらっしゃいました。

テキストを提示することによって、まったく知らない作品の世界を知る面白さもまた、読書会の醍醐味ではないか、と感じました。



0 件のコメント:

コメントを投稿