2017年7月3日月曜日

「城山三郎湘南の会」との合同読書会

2017年7月2日(日)

神奈川県茅ヶ崎市の市立図書館にて、合同読書会を行いました。



名古屋二葉館の読書会は、茅ヶ崎城山三郎湘南の会と交流があり、2年に一度お互いの本拠地を訪ねて、合同読書会を開きます。



今回のテキストは城山三郎「秀吉と武吉ー目を上げれば海ー」で、戦国時代末期、瀬戸内海の村上水軍を率いた海賊大将・村上武吉を描いた作品です。

武吉は船に斬り込んで人を殺めて金品を強奪する海賊行為を禁じ、自領の通行料として徴税する帆別銭(ほべちせん)を導入して領地経営を図りました。

調略の限りを尽くして武名を挙げた中国地方の大名・毛利元就とは、厳島の決戦で手を組んで陶晴賢(すえ はるかた)を破りましたが、のちに海賊の意地と毛利一族への義理を通して秀吉の意向に沿わなかったことで、塗炭の苦しみを味わうことになります。

絶妙な人たらしで権力を拡大する豊臣秀吉に翻弄されるさまが描かれ、戦国時代の転換期における指導者の決断と生き様が対照的にあらわれています。


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今回の読書会の参加者はおよそ30名でした。


・現代に照らし合わせれば、大企業と中小企業の悲哀である。

・新時代を暴れ回るグローバリズム(秀吉)とそれに呑まれるローカルな武吉との隠喩と読み取れた。
・作者は海軍志願して広島へ行った。甘やかに感じられるサブタイトルは、海への思いがあらわれている。
・人生は思うようにはいかないものであり、引き受けた運命をどう生きるかを考えた。
・運命を従容として受け入れた生き方は「落日燃ゆ」の広田弘毅に共通している。
・合言葉を間違え、掟に反した足軽を処刑したことを悩んだ武吉が内省的で、海賊の頭目というイメージとは違う。
・大山祇(おおやまずみ)神社などで連歌の催しをして軍内の心をひとつにすることで、大勢が参加する連歌の中から優れた歌が詠まれた。
・船乗りはロマンチストで武吉の生き方に共感した。帆別銭は現代では運河通行料として形は違えどある。
・瀬戸内は重要な海域で、武吉が遺した「村上舟戦要法」は明治海軍の秋山真之も参考にしたのでは。
・武吉が好んだ「任運自在」という禅語。流れに身を任せ、その巡り合わせを味わう。それが秀吉と武吉の自由の求め方の違いであって、秀吉の自由とは世の流れを自分で曲げていったことだ。



私はこう読んだ。私はこう感じた。読まれた方々の感想に熱意が感じられました。


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読書会の前に味わった洋食がとても美味しかったです。





読書会の後は、茅ヶ崎ゆかりの人物館へ。



名古屋出身の城山三郎は、作家生活を始めて以降、茅ヶ崎に移り住みました。
城山氏と交流のあった人々のエピソードや思い入れのある作品の紹介などが展示されており、城山氏の往時を偲ばせる内容でした。



別棟では茅ヶ崎ゆかりの有名人が100人以上列挙されており、面白かったです。



また、茅ヶ崎駅前の長谷川書店さんでは、城山三郎コーナーが設置されていました。

没後10年を偲ぶ文がとてもよかったです。



「目を上げれば海  運に任せて自在の海  ああ、人の世は海」(『秀吉と武吉』より)

茅ヶ崎は海に面した街。

ラチエン通りから見えた烏帽子岩や、サーファーたちの姿が印象的でした。

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