2018年2月19日月曜日

拡大読書会・城山三郎「冬の派閥」

2018218日。

名古屋市・東別院イーブルなごやにて、あいち文学フォーラム主催のイベント・拡大読書会を行いました。
テキストは、城山三郎「冬の派閥」。



幕末の尾張藩主・徳川慶勝を主人公とした、尾張藩内の派閥抗争の苦悩、明治維新以後、開拓のため北海道へ入職した家臣たちの苦難を描いた作品です。



はじめに全体で作品にまつわる話題の情報交換をしました。



作品の重要場面である、青松葉事件の概要、北海道八雲町と交流のある小牧市との現在のかかわりなどの情報を提供しました。



参加者をグループ分けして、各々が自分の意見や感想を自由に話し合います。
1時間の話し合いの後、全体会でそれぞれの班で出た感想を発表しました。



・慶勝は、優しくて「和合」の人である。徳川慶喜との対比で、慶喜の尻ぬぐいをさせられた。慶勝の心の休まる暇がなかった。
・戦がなく、江戸まで新政府軍が進軍できたのも、尾張藩のおかげ。そのことがあまりにも知られていない。青松葉事件の影響が大きかったのか。
・これまでの歴史観が勝ち組の視点によって書かれていて、今はそれが横行している。もっと慶勝が日本を救ったということに光をあててほしい。

・名古屋の歴史について知らないことが多く書かれていて、びっくりした。
・八雲の由来の話で盛り上がった。
・大河ドラマになってほしいが、慶勝に華がない。

・城山三郎の作品は、経済や戦争の話が多いので歴史作品に興味がいかなかった。
・城山氏が教員時代に講義を受けていたことがあって、先生と作家とのギャップが面白かった。
・慶勝は徳川一門として、最後を戦乱のないようにまとめようとした。また、散逸した資料を蓬左文庫に収めた功績もある。

・史実がよくわかって勉強になった。良い悪いは別として、司馬遼太郎の作品と違う慶勝の姿が見えた。
・この作品を読むたびに、こういうことも書かれていたのか、と新しい発見がある。
・前半の派閥抗争は複雑でわかりにくい。後半の北海道移住の話が面白かった。
・作者はもっと多く書きたかったのではないか。奥歯にものがはさまったような内容。
・どうして城山氏は作品の主人公に慶勝を選んだのか?「落日燃ゆ」の広田弘毅の人間像とかなり似ている。

・作中の典医の能見は、城山氏の自画像か。慶勝が腹を割って話せた相談相手であった。
・なぜ殿様は切腹しなかったのか?徳川体制下では殿様に責任がいかないような仕組みだったのでは。
・「熟察」は現在にも残る、尾張人の気質である。



様々な意見や感想が飛び交い、まだまだ時間が足りないくらいでした。




次回の拡大読書会は、2018年3月11日(日曜)。イーブルなごやにて。

テキストは、奥山景布子「葵の残葉」(文藝春秋)です。