2019年10月27日日曜日

読書会「新美南吉 詩集+幼年童話」

2019年10月27日(日) 

東別院・イーブルなごやにて、 
あいち文学フォーラム主催の読書会「新美南吉 詩集+幼年童話」を行いました。 




南吉作品をテーマにした、精巧なジオラマと細工品を眺めながらの読書会です。 







参加者が、それぞれ思い思いに、気に入った作品について話されました。 

・「一年生たちとひよめ」で、昔はひよめを、ひよ(かいつぶり)の目と呼んでいたかもしれな     い。南吉の生きていた時代を思いながら読んでいた。 
 何年か経ってから再び読んだら「南吉にまた出会えた」という思いで幼年童話を読んだ。 
 わらべうた風に一年生たちとひよめを読んだ。 
・「最後の胡弓弾き」自然に体が動いて弾きたくなる。胡弓を弾く相手がいなくなって、だれのために弾くのかわからなくなり、胡弓を売るところが印象に残った。相手を思いやる心を養うために、童話は必要。 
・時代とともにかわるものを描く手腕が上手い。庶民から見た近代の姿が描かれている。 
村の子どもたちがうぐいす笛を吹くところなど。苦しみをもった人が寄り添って生きる姿は今でも通じる。 
・「こぞうさんのおきょう」こぞうをお経に行かせたり、うさぎのやりとりがおかしかったり、のどかな情景が広がる。 
 檀家たちがこぞうをあたたかく包みこんでいる。南吉の作品は悲しい話が多いが、幼年童話は明るく、落語のようなオチが笑える。 
・「でんでんむしのかなしみ」は、仏教が根底にあるのでは。 
・子どもでも読めるが、大人にも通じる深さが作品にある。 



・「父」のように、個人的体験をつづった、恋人との別れを描いた詩が印象深い。別れの決意を無理にさせられた。詩から作者の強がりを感じさせる。 
・童話と比べて、詩のほうはリアルな思いが感じられる。 
・養母が、いかに苦心して南吉を育てたかが伺える詩がある。 
・体が弱かったからか、屈折した思いが感じられる。 
・「墓碑銘」からは、男としての自信のなさがあらわれている。 
・「一年詩集の序」は、格調高く、感受性の豊かな女学生に共振した南吉の贈り物。 
・「貝殻」は、昔を思い出し、笛として吹ける貝を見つけると嬉しかった。 
・「天国」は優しくて、いわさきちひろの水彩画が目に浮かぶよう。小さい頃に亡くした母の背中に思いをはせている。でんでんむしのかなしみにも背中が出てきて、南吉作品に通じている。 
・「貝殻」は、フランスの詩人ジャン・コクトーの影響か。 
・「手」は生活者としての南吉以上に、文学者としての気概を感じた。 
・「初夏抒情」は、短い詩から、当時の流行の服装や思想、景色が思い浮かぶ。 



2時間ではとても足りないくらいに、南吉作品について語り合った時間でした。 


(文と写真:鈴木)