2018年10月14日日曜日

連城三紀彦作品を読む


20181014日(日)

名古屋・イーブルなごやにて、読書会「連城三紀彦作品を読む」を行いました。

連城三紀彦(1948-2013)は、「恋文」「戻り川心中」「隠れ菊」など、ミステリーや恋愛小説、舞台の脚本などを幅広く手掛けた、愛知県生まれの作家です。

今回の読書会では、「恋文」と「戻り川心中」をテキストに、各1時間、感想を話し合いました。




「恋文」 年下の夫としっかり者の妻、末期の病に侵された女性との三角関係を描いた、短編恋愛小説。

・男から見ると、郷子の強くて意地っ張りなところは、あまり好きではない人もいるのでは。自分を抑えている郷子にせつないものを感じた。
・ダメな主人にしっかりした奥さん。(読み手が)年齢を経てから読み方が変わったが、お互いを思いやる気持ち、という点は、昔から変わらない。
・悪人が出てこないので、どこか物足りない気もする。
・三角関係のバランスがよく出ていて、人間味が奥深く出ている。人間ドラマとしての描写が細かく、人間をよく描いている。
・(読み手は)男だが、郷子目線で読んでいた。将一は子供っぽすぎて共感できない。郷子のやきもきする思いがよく出ていた。
・読んでいるうちに、仏心がでてきて、それぞれの人物に理解できる気持ちになった。
・結末まで謎の部分を放りだして終わらせたのも、短編ミステリーらしい所。
 はっきりさせずに終わるのが物語の肝。
・それぞれの人物に、作家の個性や人生観が反映されている。




「戻り川心中」 大正末期の天才歌人が二人の女性を死に追いやり、自らも命を絶った真相を探る、詩情あふれるミステリー小説。

・はじめはミステリー小説とは思わなかった。主人公の苑田が本当にいた人物なのか気になって、ネットで調べてしまった。
・太宰治や竹久夢二を思わせる、幻想的なイメージ。
・計算しつくされていて、歌に合わせて自己を追い詰めるが、はたして人を死なせてまで人を感動させる歌が作れるのか。
・予定調和的な展開なので、やりきれなさを感じる。
・厭世的な時代背景があり、破滅的な歌人の人生が伝わる描き方。
・設定に興味がわきやすく、主人公のそれぞれの時期の歌の上手い下手を書き分けた、作者の腕がすごい。
・技巧が追い付いていない歌人の苦しみを、もう少し伝えてほしかった。
・犯人探しではなく、彼が本当に愛した女性は誰か、に焦点が当てられていたところは、作者が新しいミステリー小説の開拓を、狙って描いていた。
・どこか冷めている印象があった。作者本人にもそういう人間性があるのでは。
・芸術が先行して、現実を形づくっていく小説。




話し合うごとに、新たな感想や意見が次々と出てきて、時間が足りないくらいに盛り上がりました。


次回のイベントは1118日(日)に、連城三紀彦作品の朗読を予定しています。


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